バフェット太郎です。

投資家たちは米国の利上げばかり気にしているわけですが、最近になって中国経済が緩やかに復調していることを見逃してはいけません。

中国経済が緩やかな減速過程にあると言われている昨今、先日発表された中国の経済統計を眺めると回復の兆しが見え始めています。例えば、8月の中国小売売上高は前年比+10.6%と二ケタ増を維持しました。これは主に乗用車の販売台数が小型車を中心に伸びているためです。また、8月の中国鉱工業生産も前年比+6.3%増でした。各経済指標の伸び率は低下傾向にあるものの、消費と生産の伸びが拡大しており、しっかりと経済成長していることが確認できています。

さて、これからの中国経済の見通しはどのようになっていくでしょうか。日経チャンネルマーケッツの『中国経済の展望とリスク』によれば、中国経済は成長率が少しずつ下がっていくものの、中・長期的に拡大していくだろうと予想しています。

中国は中・長期的には潜在的なインフラ開発投資の需要があることに加えて、消費財も人民に行き渡っておらず、成長の伸びしろがあります。一方で、一人っ子政策による生産年齢人口(働く人の数)の減少が問題となっており、これをどうソフトランディングするかというところが中国政府の腕の見せどころになるわけです。

ところで中国は、日本がどうして20年にもわたる長期不況に苦しんだのかということについて徹底的に研究・分析しているそうです。その問いの可能な解答のひとつに「為替要因」が挙げられています。

日本は1ドル360円から75円まで円高が長く続いたため、輸出主導型経済ではうまくいかなかったのです。また、生産年齢人口の減少により、財やサービスの供給過剰も問題となりました。

では、中国の人民元を安くすれば日本のような長期不況は回避できるのでしょうか?答えは「ノー」です。人民元安は輸出こそ伸びますが、中国経済はすでに生産年齢人口が減少していますから、輸出を中心とした外需主導型経済から内需主導型経済へとモデルチェンジしなければならないのです。そのため、購買力を低下させるだけでなく、海外からの投資を抑制させる要因になりかねない人民元安は選択肢にならないのです。一方で人民元高も輸出の落ち込みとデフレ不況に陥る可能性が高いので選択肢になりません。
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従って、為替を安くしても高くしても問題は解決せず、日本の二の舞になる可能性があるのです。そこで中国政府は経済が為替の影響を受けにくくするために、人民元を基軸通貨にすればよいと考えるようになりました。

そもそも基軸通貨とは人気投票で決まるので、誰もが中国に不信感を持っている間は無理でしょう。しかし、中国には巨大な実需があり、安定した経済成長が見込めます。そこで、貿易相手に東南アジアや中央アジアなど、経済的にも軍事的にも弱い国々と貿易することで、次第に決済通貨をドルから人民元に切り替えます。東南アジアなどでは決済通貨がすでに人民元になっているところが少なくありません。

中央アジアや東南アジアで決済通貨が人民元になれば、国際的な活動をしている銀行が決済通貨として人民元を持ち始めます。すると、人民元は決済通貨だから足りないときは調達しなければならないし、余っているときは投資に回して運用しなければなりません。では、どこで運用すればいいのかとなると、必然的に人民元が広く流通している国家、すなわち中国になります。中国に国際的な銀行がお金を置き始めると、中国政府はそれをモニタリングできるようになったり、あるいは中国政府と敵対する国々に対して、資金を凍結するといったことも可能になります。

2014年6月、習近平国家主席は「米国を除くアジアの国々でアジアの新しい秩序を作りたい」と国際秩序に対抗するような宣言をしました。そして、今年の10月1日、人民元がIMFのSDR(特別引き出し権)の構成通貨に採用される見込みで、国際通貨として一歩前進することになります。

中国政府は人民元を基軸通貨にすることで、新しい秩序を作り、世界からの投資マネーを引き付け、世界中のお金を監視、管理することで日本のような長期不況を避けようとしています。しかし、当然これはうまくいけばの話です。

そもそも中国の歴史を振り返れば、王朝ができては腐敗して、新しい王朝が生まれてはまた腐敗するということを4000年も繰り返しているのです。つまり、70~80年しか歴史のない中華人民共和国は政治体制がいつ崩れたっておかしくないわけで、基軸通貨など夢半ばで終わる可能性の方が大きいです。

グッドラック。

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