バフェット太郎です。

株価が割高か割安かを示す指標にPER(株価収益率)というものがありますが、それを応用したものにCAPEレシオ(シラーPER)というものがあります。

CAPEレシオとは、1988年にロバート・シラー教授(現エール大学)とジョン・キャンベル教授(現ハーバード大学)が編み出した指標で、「シラーPER」ともよばれます。これは単年度の一株当たりの利益ではなく、インフレ調整後一株当たりの利益の10年移動平均値を用いてPERを計算するというものです。これにより、一時的な要因による収益変動や景気循環の影響を除くことができるため、実質的な企業収益力に対して、株価が割高か割安かを示す指標として投資家の間では人気のある投資指標です。

人気になった背景には、シラー教授がCAPEレシオを根拠に米国経済に警鐘を鳴らした「根拠なき熱狂」が2000年のITバブル崩壊直前に発売されたこともあり、投資家の度肝を抜いたのです。さらに2005年に改訂版を出すと2008年に金融危機が発生しました。このたった二つの暴落によりCAPEレシオは時にシラーPERと呼ばれ、超人気の投資指標になってしまったのです。

さて、このCAPEレシオですが、現在の値は26.72倍と、過去50年平均の20倍より高く、08年の金融危機と同水準です。また、27倍よりも高かったのは、過去130年を振り返っても2000年のITバブル崩壊時と、1929年の世界恐慌の二回しかありません。
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つまり、130年の歴史を振り返れば、現在の相場は暴落を間近に控えた超割高状態で、米国株なんて買うべきではないのです。また、こうしたデータから実際に米国株投資に消極的になり、持ち株を手放した投資家も少なくありません。

しかし、ジェレミー・シーゲル教授(ペンシルベニア大学ウォートン校)はシラー教授の「CAPEレシオ」は不完全だと指摘しています。

シーゲル教授によれば、近年、会計原則の概念が定まらず、たびたび改定されているため、CAPEレシオが正常に機能していないとのこと。従来の会計原則では、企業が業績を実際より大きく見せていましたが、最近ではその手口が通用しなくなり、実体に見合った正確な業績が反映されています。そのため、CAPEレシオの計算をやり直す必要があるのです。

ウォールストリートジャーナルが独自に計算をやり直した結果、新CAPEレシオの過去50年平均は20倍から17倍に修正されました。そして現在の値は26.72倍から19倍に修正されました。これは過去平均の17倍と比べても若干高い程度で、割高とは言えません。ちなみに、2000年のITバブル崩壊時は39倍、07年の金融危機直前は24倍です。

これに対してシラー教授は、CAPEレシオは不完全であり売買のタイミングを計る道具としては使えないと認めつつも、ウォールストリートジャーナルが計算に使った商務省のデータは、株式を上場していない個人経営の店の利益を含むため、従来のCAPEレシオ同様不完全であると指摘しました。つまり、どちらのCAPEレシオも正確な経済指標とは言えないのです。

また、アスワス・ダモダラン教授(ニューヨーク大学)によれば、投資戦略にCAPEレシオを使い、さまざまな角度から分析した結果、バイ&ホールド戦略に勝てる方法は一つも見つからなかったそうです。

従って、投資家たちはCAPEレシオ(シラーPER)の26.72倍にビビって米国株投資に消極的になる必要はないし、暴落を待つ必要もありません。高PERの個別銘柄をポートフォリオに入れず、高配当優良株をポートフォリオに入れ、配当を再投資し、バイ&ホールドすればいいという当たり前のことをやればいいのです。

グッドラック。
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