バフェット太郎です。

日銀の黒田総裁が、衆院議員運営委員会での質疑で、「2019年度頃に物価が目標の2%に達すれば、出口を検討する議論をしていくことは間違いない」と発言したことで円が急速に買われました。

そもそも為替相場は二国間の金利差と相関関係にあります。例えば、米国の金利が上昇する一方、日本の金利が下落すれば、為替はドル高円安に傾きやすいです。そのため、これまでFRB(米連邦準備理事会)がゼロ金利政策を解除して金利を引き上げてきた一方、日本は金融緩和を維持し続けてきたため、日米金利差は拡大し、ドル高円安が進んでいました。

そのため、引き続き日銀が金融緩和を維持すればドル高円安が進みやすくなるものの、仮に日銀が金融緩和を解除して金利を引き上げれば、日米の金利差は縮小するので、ドル安円高が進むことが予想されます。

とはいえ、現段階では物価が日銀が目標とする2%に達する可能性は極めて低いことから、金融緩和解除に動くとは考えにくく、しばらくの間、日米金利差は拡大したままであることが予想されます。

ところが、投資家たちはことあるごとに「日銀が出口戦略を目指している」として、将来の金利差縮小を見越してドル売り円買いに動いています。

例えば、17年11月、日銀の黒田総裁がスイスのチューリッヒ大学の講演で「リバーサル・レート」について発言したことで、投資家らは「日銀は出口戦略を目指しているに違いない」と考え、ドル売り円買いに走りました。

そもそも「リバーサル・レート」とは、金利を下げすぎると金融機関の利ザヤが縮小して、金融業界全体に悪い影響を及ぼすため、金融緩和の効果は反転(リバース)して悪い結果につながるという考え方です。

そのため、投資家らは黒田総裁が「リバーサル・レート」を口にしたことで、金融緩和の正常化も近いのではとの憶測が広がりました。

さらに18年1月、ダボス会議で黒田総裁が日銀がかねてから目標として掲げている2%の物価目標に関して、「ついに(達成に)近づいていると思う」と発言したことも、金融緩和の正常化を連想させ、円買いの材料となりました。

しかし、この発言は長い文脈の一部分を切り取ったに過ぎず、発言の全体を見れば、「デフレ圧力がある中で、ようやく明るい兆しが見えつつある」というニュアンスで説明しており、その後には金融緩和縮小は「検討局面にはない」とも発言しました。

そして今回も黒田総裁の「2019年度頃に物価が目標の2%に達すれば、出口を検討する議論をしていくことは間違いない」という発言が、「日銀は来年にも出口戦略に向かう」との誤解を与えました。

とはいえ、冷静に考えればわかると思いますが、物価が目標の2%に達すれば、出口戦略を検討する議論をしていくのは当然であり、なんら驚く内容ではありません。

黒田総裁のチューリッヒ大学での講演やダボス会議での発言、そして今回の衆院議員運営委員会での質疑は、どれも出口戦略に向かうとは言っていないことを考えれば、マーケットの動きは明らかにおかしいです。

しかそ、ドル安円高が進んでいることは事実なので、これがいつまで続くのかを投資家は予想する必要があります。そこで、ドル円と日米金利差の関係を表したチャートを用意しました。
1
以前も紹介しましたが、このチャートはドル円相場と日米金利差を表しています。94年から95年5月にかけての約一年半、金利が上昇する中で本来ならドル高が進みそうですが、この時はドル安円高が進みました。しかし、96年以降は一転して相関関係を示すようになりました。
2
99年に入ると再び為替と金利差は逆相関を見せ、約一年間、金利が上昇した一方でドル安が進みました。しかし、00年になるとドットコム・バブルが崩壊して金利差が縮小の一途を辿ると、為替もドル安円高が進みました。00年以降の相関関係は14年6月まで続きました。
3
14年7月以降、日米金利差が拡大したかったものの、FRBが近く金融緩和を解除して利上げに踏み切るとの憶測が広がったことで、為替は金利差に先行するかたちで約一年間ドル高が進みました。

さて、過去24年間を振り返れば、ドル円相場と日米金利差は概ね相関関係にあるものの、まれにですが逆相関の関係を示す時も見られました。そして、この逆相関の関係を示す時、ドル円と日米金利差は約一年間反対方向に進むことが確認できます。

従って、17年11月以降の逆相関の関係は18年11月頃まで続くことが予想でき、円高は11月頃まで続くと考えられます。

グッドラック。

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