バフェット太郎です。

格差拡大を憂う人の中には、「労働者の賃金を引き上げろ!」と声高に叫ぶ人たちがいますが、多くの経済学者がそれを推奨しないのは、それが悲惨な結果を招くことを知っているからです。

事実、経済政策として最低賃金の引き上げを掲げた韓国では、失業率が4.4%と9年ぶりの高水準に達しました。

そもそも韓国は17年に文在寅(ムン・ジェイン)政権が誕生すると「所得主導型成長」を掲げて、最低賃金を2020年までに1万ウォンにするとして、劇的に引き上げてきました。結果、韓国の最低賃金は8350ウオン(7.44ドル、約820円)と、全米平均の7.25ドル(約800円)よりも高くなっています。

【韓国の最低賃金の推移(2010ー2019)】
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(出所:独立行政法人・労働政策研究・研修機構

韓国は国民に公平にお金が行き渡ることを狙って最低賃金を引き上げているわけです。しかし、企業側にとって賃金の上昇はコスト上昇を意味します。そのため、賃金の伸び率に対して生産性やインフレ率が上昇しなければ利益が圧迫されかねません。

結果、韓国は賃金の劇的な伸び率に対して生産性とインフレ率が伸び悩んだため、企業は採用を控えるなどして失業率が上昇しました。
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韓国の1月の失業率は4.4%と2010年1月以来9年ぶりの高水準にまで上昇しています。また、消費者物価指数も0.8%と16年8月以来の低水準に落ち込んでいます。
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韓国総合株価指数(KOSPI)は2230ポイントと、8年前と同水準で推移するなど、労働市場と経済指標の悪さが懸念されて伸び悩んでいます。

もちろん、必ずしも最低賃金の引き上げが失業率の上昇に繋がるわけではありません。物価上昇率や生産性の向上、賃金の緩やかな上昇率など、賃金を引き上げてもそれに耐え得る経済基盤が用意されていれば、最低賃金を引き上げても失業率は上昇しません。

しかし、そうした用意がない中で賃金だけ無理矢理引き上げても、経済にとって悪影響を及ぼし、失業率を上昇させるだけです。つまり、韓国は賃金の引き上げピッチが速すぎたわけです。

この現実を重く受け止めたムン・ジェイン大統領は、目標とする2020年1万ウォンの公約を守ることはできないとして、「公約を守れず、お詫びする」と表明しています。

このように、理想だけ掲げて賃金を押し上げても経済が疲弊するだけなので、それに耐え得る経済基盤をどのようにつくるのか、すなわち、生産性と物価をどうやって引き上げていくのかという議論とその実現が先であり、賃金の引き上げはその後でなければなりません。

グッドラック。

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