バフェット太郎です。

2008年の金融危機前、投資家の間では「長期投資家は長期的な経済成長が見込める新興国株に投資すべき」という論調が強かったです。これは2000年のドットコムバブル崩壊以降、米国株が低迷した一方で、「BRICs」(ブラジル、ロシア、インド、中国の頭文字を取った造語)をはじめとした新興国株が大暴騰したことがその論拠となっています。

しかし、金融危機以降のおよそ10年間、新興国株が低迷した一方、米国株が大きく上昇したことで、新興国株への長期投資が必ずしも賢明な投資法とは言えないことがわかりました。

【S&P500種指数とEEM(新興国株ETF)の推移】
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2008年1月以降のS&P500種指数とEEM(新興国株ETF)の推移を振り返ると、S&P500種指数がおよそ二倍になっているのに対して、EEMは3%の下落とマイナスリターンでした。また、新興国株ETFはS&P500ETFよりもETFや投資信託の経費率が割高であるため、コストや配当利回りを考慮すると、その差はさらに大きくなることが明かです。

こうしたことから、「長期投資家は長期的に経済成長が見込める新興国株に投資すべき」との意見を信じて投資をはじめた投資家たちの多くは、この10年間まともなリターンを得ることが出来なかったことになります。

ちなみに、なぜこの10年間、新興国株のパフォーマンスが悪かったのかと言えば、FRB(米連邦準備制度理事会)による利上げに他なりません。

通常、世界の投資マネーは相対的に金利の低い所から高い所へと流れる傾向にあるため、利上げ観測が高まって以来、投資マネーは新興国から米国へと流入しました。つまり、新興国から資金が流出するような局面では新興国株は上昇しにくいのです。こうした金利要因を背景に新興国株は低迷していたわけです。

言い方を変えれば、今後数年以内にFRBが利下げに踏み切る公算が大きいことを考えれば、新興国株投資の妙味は沸くと予想することができます。ただし、それはあくまでサイクルによるものなので、投資家が新興国株に長期投資して報われるかどうかは別の話です。

そもそも、株式のリターンは国によって違います。
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(出所:『証券市場の真実―101年間の目撃録』)

どの国においても、債券よりも株式のパフォーマンスが高かったのは共通する事実ですが、国によって株式リターンの違いも大きいです。たとえば、1900年から2000年までの米国の年平均リターンが6.7%だったのに対して、日本のそれは4.5%と、2.2%ポイントアンダーパフォームしています。

これは日本が敗戦国であることから、パフォーマンスが低下したと考えることができます。事実、同盟国であるドイツとイタリアの年平均リターンもそれぞれ3.6%、2.7%と低いです。

しかし、今後は労働規制による問題がパフォーマンスに影響を及ぼすことが予想されます。

なぜなら、株式投資の本質は事業のオーナーになることなので、投資家は株主価値を最大化してくれる国の企業に投資した方が長期的に報われる公算が大きいからです。

たとえば、米国は簡単にリストラに踏み切ることができますが、日本や欧州ではそれができません。そのため、米国は不採算部門で大量のリストラに踏み切る一方、成長部門で大量の新規採用に踏み切るなど、ダイナミックな経営をすることができます。

一方で、日本や欧州は不採算部門を閉鎖しても、簡単にリストラをすることができず、その人材を高給のまま他部署に異動させます。たとえて言えば、複数のプロスポーツチームを運営する会社が、野球部門の選手たちを足が速いという理由だけでサッカー部門に異動させて、野球選手時代と同じ給与のままプレーさせるようなものです。

アマチュアの世界ならそれでも通用するかもしれませんが、これでグローバル競争を勝ち抜けるわけもないので、米国との差は開くばかりです。

そのため、新興国への長期投資を考えるなら、そうした労働規制を加味する必要があります。ただし、将来労働規制が日本や欧州同様に厳しいものになれば、競争力が低下する公算も大きく、過去のリターンが高かったからという理由で、新興国株への長期投資を安易に決めるべきではありません。

グッドラック。

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