バフェット太郎です。

先日、孫正義氏率いる投資会社ソフトバンク・グループが、米ハイテク株のオプション取引で「コールオプション(買う権利)」を約40億ドル(約4200億円)分購入しました。

そもそも「オプション取引」とは、将来、売買する権利を取引することです。

たとえば、現在コーラ1缶の値段を100円として、投資家Aさんがこのコーラの値段が将来値上がりすると予想した一方、投資家Bさんは将来値下りすると予想したとします。

この時、AさんはBさんから「一年後に、コーラ1缶を、100円で購入する権利」をオプション料として10円を支払って購入します。

一年後、コーラ1缶の値段が130円に値上がりしたとすると、Aさんは「100円で購入する権利」を行使して、130円のコーラを100円で購入することができます。そして、そのコーラを市場で売却することで30円の利ザヤを得ることができるので、オプション料10円を差し引けば20円の利益になります。

ちなみにもし、コーラ1缶の値段が80円に値下がりした場合、Aさんにとって「100円で購入する権利」は価値がありませんから、オプションは行使せずに権利を放棄します。そして、オプション料として支払った10円はAさんの損失となり、Bさんの利益として確定されます。

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さて、ソフトバンクは8月以降、40億ドルものオプション料を支払って、500億ドル規模のハイテク株を買う権利を購入したわけですが、これはつまり、将来、ハイテク株が一段と値上がりして、現在500億ドルの価値が600億ドルになった場合、ソフトバンクは500億ドルでハイテク株を買う権利を行使することで600億ドルのハイテク株を500億ドルで購入し、それを市場で600億ドルで売ることで、オプション料40億ドルを差し引いた60億ドルの利ザヤを得ることができるというわけです。

そして、仮に、現在500億ドルの価値が将来500億ドル以下になれば、オプションは行使せずに権利を放棄すればいいだけですから、オプション料40億ドルを損することになります。

ちなみに、この取引にはコールオプションの売り手がいます。たとえば、投資銀行やヘッジファンドなどの投資家が売り手であるわけなんですが、彼らの損失に限度はありません。

たとえば、先ほどの例を挙げると、仮にコーラの値段が1000円に大暴騰した場合、一年後にAさんは「100円で購入する権利」を行使して、Bさんから1000円のコーラを購入します。しかし、Bさんは手元にコーラがない場合、市場で1000円のコーラを買い、Aさんに100円で売らなければなりません。これではオプション料10円を貰っても、890円もの大損失になってしまうんです。

ですから、コールオプションの売り手である投資銀行やヘッジファンドは、将来、ハイテク株が大暴騰したら大損してしまうので、その損失をヘッジするため、つまり保険を掛けるためにハイテク株を今のうちに買っておかなければならないのです。

そのため、最近、ハイテク株だけがやたら大暴騰していた背景には、ソフトバンクによる大量のオプション取引を受けて、機関投資家が買わざるを得なかったということが挙げられます。

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さて、週明け7日のソフトバンク・グループの株価は、前日比7.15%安の5881円と暴落しました。これは、ナスダック総合指数が二日連続で急落したことで、先行き不透明になってきたためです。

つまり、投資家らはソフトバンクがオプション取引で40億ドル損失するかもしれないと考えているわけです。

とはいえ、いずれにせよ今回のオプション取引はクソだと思います。

なぜなら株取引がソフトバンクの本業ではないからです。本来、投資家がソフトバンクや孫正義氏に求めていることは、第二のアリババを見つけ出してそれに投資することであり、アマゾンやテスラなど、上場企業に投資して、その利ザヤを得ることではないからです。

そして、こうした投資しかできないことを考えると、ソフトバンク・グループは上場株以外投資対象を見つけることが出来ないと認めたことに他ならないため、将来の成長性がいよいよ怪しくなってきたと言えます。

グッドラック。

 
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