バフェット太郎です。
ウォールストリート・ジャーナルによれば、インデックスファンドの始祖J・C・ボーグルを創業者に持つ、米投資信託運用大手バンガード・グループの運用資産が初めて4兆ドル(約450兆円)に達したとのこと。
今年1月のバンガード・グループの純流入額は約490億ドル(約5兆5000億円)となり、同社が運用する資産総額が過去最高を更新しました。純流入額の490億ドルのうち、約450億ドルがパッシブ運用型ファンド向けで、残りの40億ドルがアクティブ運用型ファンドでした。
そもそもパッシブ運用型ファンドとは、「S&P500」などの指数に連動することを目的に組成されたファンドのことで、手数料が低いところが特徴です。一方でアクティブ運用型ファンドとは、「S&P500」などの指数を上回ることを目的に組成されたファンドのことで、ファンドマネジャーの裁量で取引されるため、手数料が高いです。
多くの研究者たちが調査した結果、アクティブ運用型ファンドに投資するよりも、パッシブ運用型ファンドに投資した方がリターンが大きくなることが明らかになったため、アクティブ運用型ファンドから投資資金が流出し、パッシブ運用型ファンドに投資資金が流入しているのです。

グラフを眺めると、過去25年間で「バンガード500インデックスファンド」にアウトパフォームしたアクティブ運用型ファンドはわずか21.2%に留まっていることがわかります。つまり、約80%のアクティブ運用型ファンドはパッシブ運用型ファンドの「バンガード500インデックスファンド」にリターンで負けているというわけです。
ちなみに、過去10年間においてアクティブ運用型ファンドが「バンガード500インデックスファンド」をアウトパフォームした割合が36.8%と飛び抜けて良い数字だったのは、2008年から弱気相場が始まったことが大きいです。つまり、弱気相場ではアクティブ運用型ファンドがパッシブ運用型ファンドにアウトパフォームする割合が増えることを意味するのです。まぁ、それでも約63%のアクティブ運用型ファンドはパッシブ運用型ファンドに負けるので、どのような景気局面においてもパッシブ運用型ファンドが最適解であることに変わりありませんが。
こうしたことから「アクティブ運用型ファンドからパッシブ運用型ファンドへ」の動きがますます加速していくことが予想されています。
ところでみんながパッシブ運用型ファンドに投資するとどうなるのでしょうか。
答えは簡単で、「合成の誤謬」が起きるだけです。
「合成の誤謬」とは、一人ひとりが正しいとされる行動をとったとしても、全員が同じ行動をとることで悪い結果を招いてしまうことを意味します。
そもそもパッシブ運用型ファンドとは、投資家から投資資金を集めて、指数に連動するように投資するわけですから、指数に採用されている銘柄をバリュエーションを無視して買い集めることになります。つまり、パッシブ運用型ファンドの運用担当者は「この株PER1000倍とか割高すぎ、誰が買うんだwww あ、ぼくだ」てな風に、指数に採用されているなら、たとえその株が割高だとしても、強制的に買わざるを得ないんですね。
景気の良いとき、つまり個人投資家たちが将来に楽観的になっている時ほど、ファンドに投資マネーが流入しますから、運用担当者は内心(こりゃバブってきてるな。。。)と思っても、「ま、買うけどね」と買い向かうわけです。運用担当者は指数を上回ってもダメだし下回ってもダメなので、ファンドに投資資金が集まれば機械的に買うだけなのです。
しかし、そもそもどうしてこのようなバリュエーションを無視した運用手法が通用するのでしょうか。答えは簡単で、それはアクティブ運用型ファンドたちによる、効率的市場仮説に基づいた公正な価格形成機能にタダ乗りしているからに他なりません。
効率的市場仮説とは、マーケットはあらゆる情報を瞬時に織り込むため、いつでも公正な価格が形成されているとする仮説です。これには異論もあるけれど、概ね正しいです。つまり、株価とは多くの投資家たちがあらゆる情報を瞬時に織り込み、買ったり売ったりすることで公正で適正な価格が形成されていると言えるのです。また、そうした中において、市場を出し抜くことは誰にもできないので、アクティブ運用型ファンドは高額な手数料分、パッシブ運用型ファンドにアンダーパフォームしやすいというわけです。
だからパッシブ運用型ファンドの運用担当者が「PER1000倍とか高すぎワロタ」と言っても、効率的市場仮説の下では、それが公正で適正な価格であり、(こりゃバブってきたな。。。)と思っても、やはり公正で適正な価格なので、効率的市場仮説に逆らわず、指数に連動するようにただ買い増した方が、買ったり売ったりするよりリターンが高くなるというわけです。
しかし、アクティブ運用型ファンドが消滅して、パッシブ運用型ファンドだけの世界では、このような効率的市場仮説による公正で適正な価格形成機能が失われるので、パッシブ運用型ファンドは指数に採用された割高な銘柄をひたすらファンダメンタルズを無視して買い続けることになります。すると、指数に採用されている銘柄は、指数に採用されているだけでなんの企業努力もせずに投資家からお金を集めることができます。しかもパッシブ運用型ファンドという「物言わぬ株主」つきで。
一方で指数に採用されない銘柄にはほとんど投資資金が集まりませんから、割安で放置されやすくなります。すると企業に対するチェック機能も甘くなりますから、指数に採用されていない企業は採用されるために不正会計に走りやすくなります。また、上場企業も指数に採用されてさえすれば簡単に投資資金が集まるため不正会計に走りやすくなります。つまり、パッシブ運用型ファンドばかりの世界では不正会計の温床となり得るのです。
また、効率的市場仮説による公正な価格形成機能を失った市場では、市場を出し抜くことが容易になるため、アクティブ運用型ファンドのパッシブ運用型ファンドに対する優位性が増します。また、不況局面で投資家がパッシブ運用型ファンドを売却すれば、売りが売りを呼び、指数に採用されている銘柄は指数に採用されているというだけで大暴落するかもしれません。
従って、すべての投資家がパッシブ運用ファンドに投資すれば、いずれ合成の誤謬が起き、株式市場は適正な価格形成機能が失われるだけでなく、倫理観の欠如による不正会計など新たな投資リスクを生み出すことになります。
ただし、誰もがパッシブ運用型ファンドに投資する未来はまだずっと後の話なので、今はまだパッシブ運用型ファンドの優位性による恩恵を享受できるので安心してください。
グッドラック。
(関連書籍:「インデックス・ファンドの時代―アメリカにおける資産運用の新潮流
」「敗者のゲーム〈原著第6版〉
」「ウォール街のランダム・ウォーカー〈原著第11版〉 ―株式投資の不滅の真理
」)
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ウォールストリート・ジャーナルによれば、インデックスファンドの始祖J・C・ボーグルを創業者に持つ、米投資信託運用大手バンガード・グループの運用資産が初めて4兆ドル(約450兆円)に達したとのこと。
今年1月のバンガード・グループの純流入額は約490億ドル(約5兆5000億円)となり、同社が運用する資産総額が過去最高を更新しました。純流入額の490億ドルのうち、約450億ドルがパッシブ運用型ファンド向けで、残りの40億ドルがアクティブ運用型ファンドでした。
そもそもパッシブ運用型ファンドとは、「S&P500」などの指数に連動することを目的に組成されたファンドのことで、手数料が低いところが特徴です。一方でアクティブ運用型ファンドとは、「S&P500」などの指数を上回ることを目的に組成されたファンドのことで、ファンドマネジャーの裁量で取引されるため、手数料が高いです。
多くの研究者たちが調査した結果、アクティブ運用型ファンドに投資するよりも、パッシブ運用型ファンドに投資した方がリターンが大きくなることが明らかになったため、アクティブ運用型ファンドから投資資金が流出し、パッシブ運用型ファンドに投資資金が流入しているのです。

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このグラフはS&P500指数に連動するように組成されたパッシブ運用型ファンド「バンガード500インデックスファンド」に、アウトパフォームしたアクティブ運用型ファンドの割合を示しています。グラフを眺めると、過去25年間で「バンガード500インデックスファンド」にアウトパフォームしたアクティブ運用型ファンドはわずか21.2%に留まっていることがわかります。つまり、約80%のアクティブ運用型ファンドはパッシブ運用型ファンドの「バンガード500インデックスファンド」にリターンで負けているというわけです。
ちなみに、過去10年間においてアクティブ運用型ファンドが「バンガード500インデックスファンド」をアウトパフォームした割合が36.8%と飛び抜けて良い数字だったのは、2008年から弱気相場が始まったことが大きいです。つまり、弱気相場ではアクティブ運用型ファンドがパッシブ運用型ファンドにアウトパフォームする割合が増えることを意味するのです。まぁ、それでも約63%のアクティブ運用型ファンドはパッシブ運用型ファンドに負けるので、どのような景気局面においてもパッシブ運用型ファンドが最適解であることに変わりありませんが。
こうしたことから「アクティブ運用型ファンドからパッシブ運用型ファンドへ」の動きがますます加速していくことが予想されています。
ところでみんながパッシブ運用型ファンドに投資するとどうなるのでしょうか。
答えは簡単で、「合成の誤謬」が起きるだけです。
「合成の誤謬」とは、一人ひとりが正しいとされる行動をとったとしても、全員が同じ行動をとることで悪い結果を招いてしまうことを意味します。
そもそもパッシブ運用型ファンドとは、投資家から投資資金を集めて、指数に連動するように投資するわけですから、指数に採用されている銘柄をバリュエーションを無視して買い集めることになります。つまり、パッシブ運用型ファンドの運用担当者は「この株PER1000倍とか割高すぎ、誰が買うんだwww あ、ぼくだ」てな風に、指数に採用されているなら、たとえその株が割高だとしても、強制的に買わざるを得ないんですね。
景気の良いとき、つまり個人投資家たちが将来に楽観的になっている時ほど、ファンドに投資マネーが流入しますから、運用担当者は内心(こりゃバブってきてるな。。。)と思っても、「ま、買うけどね」と買い向かうわけです。運用担当者は指数を上回ってもダメだし下回ってもダメなので、ファンドに投資資金が集まれば機械的に買うだけなのです。
しかし、そもそもどうしてこのようなバリュエーションを無視した運用手法が通用するのでしょうか。答えは簡単で、それはアクティブ運用型ファンドたちによる、効率的市場仮説に基づいた公正な価格形成機能にタダ乗りしているからに他なりません。
効率的市場仮説とは、マーケットはあらゆる情報を瞬時に織り込むため、いつでも公正な価格が形成されているとする仮説です。これには異論もあるけれど、概ね正しいです。つまり、株価とは多くの投資家たちがあらゆる情報を瞬時に織り込み、買ったり売ったりすることで公正で適正な価格が形成されていると言えるのです。また、そうした中において、市場を出し抜くことは誰にもできないので、アクティブ運用型ファンドは高額な手数料分、パッシブ運用型ファンドにアンダーパフォームしやすいというわけです。
だからパッシブ運用型ファンドの運用担当者が「PER1000倍とか高すぎワロタ」と言っても、効率的市場仮説の下では、それが公正で適正な価格であり、(こりゃバブってきたな。。。)と思っても、やはり公正で適正な価格なので、効率的市場仮説に逆らわず、指数に連動するようにただ買い増した方が、買ったり売ったりするよりリターンが高くなるというわけです。
しかし、アクティブ運用型ファンドが消滅して、パッシブ運用型ファンドだけの世界では、このような効率的市場仮説による公正で適正な価格形成機能が失われるので、パッシブ運用型ファンドは指数に採用された割高な銘柄をひたすらファンダメンタルズを無視して買い続けることになります。すると、指数に採用されている銘柄は、指数に採用されているだけでなんの企業努力もせずに投資家からお金を集めることができます。しかもパッシブ運用型ファンドという「物言わぬ株主」つきで。
一方で指数に採用されない銘柄にはほとんど投資資金が集まりませんから、割安で放置されやすくなります。すると企業に対するチェック機能も甘くなりますから、指数に採用されていない企業は採用されるために不正会計に走りやすくなります。また、上場企業も指数に採用されてさえすれば簡単に投資資金が集まるため不正会計に走りやすくなります。つまり、パッシブ運用型ファンドばかりの世界では不正会計の温床となり得るのです。
また、効率的市場仮説による公正な価格形成機能を失った市場では、市場を出し抜くことが容易になるため、アクティブ運用型ファンドのパッシブ運用型ファンドに対する優位性が増します。また、不況局面で投資家がパッシブ運用型ファンドを売却すれば、売りが売りを呼び、指数に採用されている銘柄は指数に採用されているというだけで大暴落するかもしれません。
従って、すべての投資家がパッシブ運用ファンドに投資すれば、いずれ合成の誤謬が起き、株式市場は適正な価格形成機能が失われるだけでなく、倫理観の欠如による不正会計など新たな投資リスクを生み出すことになります。
ただし、誰もがパッシブ運用型ファンドに投資する未来はまだずっと後の話なので、今はまだパッシブ運用型ファンドの優位性による恩恵を享受できるので安心してください。
グッドラック。
(関連書籍:「インデックス・ファンドの時代―アメリカにおける資産運用の新潮流

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