ウォールストリート・ジャーナルに「米タバコ業界に黄金期再来か」との記事。
そもそもタバコ業界は、1950年代に「タバコ喫煙と癌」との関係を指摘する多数の医学的報告書が相次いで発表されたことを受けて以降、規制強化や訴訟による巨額の賠償金額、そして喫煙人口の減少による売上高の落ち込みから、暗い未来しか予想できませんでした。
しかし、90年代から00年代にかけて嵐のような集団訴訟に見舞われるも、それで倒産する大手タバコ会社はなく、そこから少しずつ各社の業績は回復してきました。これは各社がタバコを値上げするだけで儲かることを知ったためです。
【米国の喫煙率】
米国の喫煙率は、95年から2015年の20年にかけて39%低下しました。喫煙率の低下だけを考えれば、タバコ業界の未来は一見して暗く感じます。
【米国のタバコ売上高】
しかし、喫煙率が低下する一方で、米国のタバコ売上高は過去15年間で32%も増加し、ビールと炭酸飲料の合計の売上高を上回りました。
【タバコ、ビール、炭酸飲料の各種売上高】
タバコの売上高が増加した主な要因は、一箱当たりのタバコの値段が上がったためです。結果、喫煙率が低下しても売上高は過去15年で32%増加したのです。
【米国タバコの一箱当たりの値段】
【各国の一箱当たりの値段】

ちなみに、米国のタバコの値段はオーストラリアや英国よりも圧倒的に安いです。これは米国のタバコ一箱当たりにかかる税金の割合が42%に対して、英国のそれは82%と高率だからです。そのため、米国タバコは値上げ余地が残されています。
また、米国は合衆国憲法修正第一条により、表現の自由が保障されており、タバコの健康被害に関する警告表示の義務付けなどが他国に比べると厳しくありません。これは英国やオーストラリアなどで、タバコがくすんだ色の包装で売られ、箱には肺疾患や失明など喫煙に伴う健康リスクへの警告文が生々しい写真と共に大きく表示されているのとは対照的です。
こうしたことから、喫煙率が低下しても値上げすることで安定したキャッシュフローが期待できるわけです。さらに、タバコ業界は業界再編により大手タバコ会社が7社から2社に減り、最大手のアルトリア・グループ(MO)とレイノルズ・アメリカン(RAI)の二社で市場シェアの約80%を占めるなど独占状態になっていることも安心材料です。
【各企業の市場シェア】
タバコやソフトドリンク、洗剤、石鹸、歯磨き粉、髭剃りのような消費財は、各社それぞれ品質や機能にそれほど大きな違いはありません。そのためこれらの業界がどうやってライバルから市場シェアを奪うかと言うと、広告によるイメージ戦略しかないのです。そのためコカ・コーラ(KO)は莫大な広告費を投入することでブランドランキングで常に上位に位置し、ライバルを寄せつけないのです。
翻ってタバコ業界を眺めると、広告規制があるため広告を利用したイメージ戦略ができません。つまり、これは今後も市場シェアが大きく変わることがないことを意味し、新興勢力が台頭するなんてこともあり得ないわけです。
そのため、今後もタバコ業界は安定したキャッシュフローを投資家に還元してくれることが容易に予想されます。
ちなみにアルトリア・グループ(MO)のバリュエーションは予想PER22倍、配当利回り3.41%、レイノルズ・アメリカンの予想PERは25倍、配当利回り3.20%と、両社を比較するとアルトリア(MO)の方が割安だと言えます。
グッドラック。
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