長期投資家のなかにはアマゾン(AMZN)に投資する人がいますが、AMZNは長期投資家が保有すべき銘柄ではありません。長期投資家は主にバリュー(割安)株に投資し、短・中期投資家は主にグロース(成長)株に投資します。しかし、自称長期投資家のなかにはAMZNやフェイスブック(FB)、アップル(AAPL)のようなグロース株を長期保有しようとするイタイ凍死家が後を絶ちません。

長期投資家が保有すべきバリュー銘柄として、プロクター&ギャンブル(PG)やコカ・コーラ(KO)などがあります。これらの銘柄の特徴は業績予想が容易で、値動きがマイルドなことです。また、世の中を変えるような革新的な技術やサービスが期待されていないので、一言でいえば、地味で退屈な銘柄です。反対に、AMZNやFBなどは長期投資家には向かない銘柄です。これらの銘柄の特徴は、投資家の期待値が大きいことや、将来の業績予想が困難であることなどが挙げられます。AMZNなどのネットを介して消費するというライフスタイルは拡大傾向にあり、これからも拡大することは容易に想像できます。そうした時代の流れに乗って、長期保有するということは一見正しいことのように思えますが、これを投資の世界では「成長の罠」にハマると言ったりします。

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「成長の罠」とは、時代の最先端を行く企業に投資することで、投資家は過大な値段を支払わされるため、長期的に見たリターンは平均を下回るということです。目先の株価上昇や業績拡大に熱狂し、過大な価格を正当化し、成長の罠にハマる投資家はこれまでにもたくさんいました。

ジェレミー・シーゲルの『株式投資の未来ー永続する会社が本当の利益をもたらす』(日経BP)では、1950年~2003年までの間、IBMとエクソン・モービル(XOM)にそれぞれ投資し、配当を再投資した場合のトータルリターンを検証しました。結果、IBMのEPS成長率は10.94%と、XOMの7.47%をアウトパフォームしているのにも関わらず、トータルリターンは、IBMが年率13.83%、XOMが同14.42%と、XOMがIBMをアウトパフォームしました。これは投資家がIBMに支払った価格が高すぎたためです。その証拠に、同期間のXOMの平均PERが12.97倍、平均配当利回りが5.19%に対して、IBMはPER26.76倍、配当利回り2.18%でした。

現在、AMZNのPERはおよそ1000倍近くあり配当利回りは0%なので、今後、EPSの成長率が他社を圧倒したとしても長期保有にはあまり向かないということがわかります。

長期投資家が保有すべきバリュー銘柄とは、XOMに限らず、KOやPG、ジョンソンエンドジョンソン(JNJ)などの高配当優良株です。どれもバフェット銘柄ですが、長期投資に相応しいバリュー銘柄は、ごく一握りの限られた数しかないので、長期投資家はどれも同じような銘柄を持つことになります。従って、誰もが知っていて、株価の値上りが期待できない、地味で退屈な銘柄に投資することを恥じる必要はありません。短期的な値上がり益に釣られて、保有しているだけで誰もが称賛してくれるようなAMZNやFBのような株に安易に長期投資することこそ、恥じるべきなのです。
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