バフェット太郎です。

FDA(米食品医薬品局)のスコット・ゴットリーブ長官が辞任することが決定したことで、米たばこ最大手のアルトリア・グループ(MO)と第二位のブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BTI)の株価がそれぞれ+3.39%高、+4.47%高と大きく上昇しました。一方で、バイオ関連株は軒並み急落しました。

これは、ゴットリーブ長官が電子たばことメンソールたばこで規制強化を推進する一方、画期的な治療薬の承認審査を迅速化し、新種の医薬品の承認を次々と認めていたためです。ちなみに、18年の承認件数は59件と、オバマ政権時代の16年22件と比べておよそ2.7倍です。

辞任理由は「家族との時間」を優先するためです。ゴットリーブ氏は首都ワシントンで単身赴任していたわけですが、「家族と離れて暮らす苦労を過去二年間味わったこと以外に、私をこの職務から引き離す要因は恐らくない」と説明しました。

「そんなことで辞任してしまうの?」と思う人もいるかもしれませんが、ゴットリーブ氏は過去ホジキンリンパ種(癌の一種)に発症し、現在は完治しているはずではあるものの、再発した可能性があります。あるいは、一度死を真剣に考えたことで、家族の価値に比べて仕事の価値の方がはるかに低いことを悟ったのかもしれません。ゴットリーブ氏には9歳の双子と5歳の末っ子がいて、みんな女の子だそうです。

さて、ゴットリーブ氏の下、FDAは電子たばこを小売店などで販売を禁止することを提案し、さらに電子たばこのネット販売についても年齢確認に関する規制強化を打ち出していました。また、ニコチン含有量を依存症にならないレベルまで引き下げる規制計画や、メンソールたばこの販売禁止の方針、さらに加熱式たばこ「アイコス」の販売認可を巡って、いずれも「規制強化が幾分和らぐのでは?」との期待感が高まったことで、たばこ業界にポジティブ・サプライズとなりました。

そこで、たばこ株に明るい兆しが見えつつあることから、アルトリア・グループの業績を振り返っておきたいと思います。

【アルトリア・グループのEPSとDPSの推移:2009-2019】
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グラフは過去10年間のアルトリア・グループ(MO)のEPS(一株当たりの利益)とDPS(一株当たりの配当)の推移と、19年の業績予想です。

アルトリアは着実にEPSとDPSを拡大させており、19年通期EPSは4.15~4.27ドルになるとの見通しを発表しています。アナリスト予想は4.20ドルです。ちなみに、16年と17年のEPSが大きく増加した主な要因は、保有するビール大手のSABミラー株を同業最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(BUD)に売却したためです。

【EPSとCFPSの推移】
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CFPSとは一株当たりの営業キャッシュフローのことで、営業キャッシュフローとは本業の儲けを表します。そのため、本業の儲けとEPSが乖離している場合、投資家は注視する必要があります。

たとえば、16年と17年にEPSがCFPSに大きく乖離していることがわかります。EPSしか見ていない人は業績が好調だったと錯覚するわけですが、これは業績が好調だったというわけではなくて、保有するビール大手SABミラー株を売却したことによる一時的な要因です。そのため、18年は二期連続でEPSが減少しているわけです。

【アルトリア・グループのCFPSとDPSの推移:2009-2018】
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ちなみに、16年は本業の儲けであるCFPSよりDPS(一株当たりの配当)の方が多かったです。これはアルトリアが無理して配当を出したことを意味します。ただし、アルトリアのCFPSが16年、17年と二期連続で低迷した主な要因がSABミラーとアンハイザー・ブッシュ・インベブの経営統合による一時的な要因であることから、過度に悲観的になるべきではありません。

事実、アルトリアの経営陣も減配をせずにむしろ増配を続け、18年には再びCFPSがDPSを大きく上回り、増配余地が生まれています。
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週足チャートを眺めると、50週移動平均線を試す展開が予想されます。

現在、業績は比較的堅調であるものの、依然としてたばこ産業は向かい風を受けており、今回のポジティブ・サプライズも「希望的観測」に留まっていることから、積極的に買い向かえるわけではないものの、予想配当利回りが5.9%であることを考えれば、投資妙味があると言えます。

グッドラック。

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