バフェット太郎です。

米バイオ大手のギリアド・サイエンシズ(GILD)が新型コロナウイルス治療薬「レムデシビル」の販売価格を1投与当たり390ドルにすることを決定しました。

一回の治療コース(5日間)は2340ドルで、価格は全世界一律です。これは、国ごとに価格交渉をすることになれば「レムデシビル」の提供が遅れてしまうからです。

ちなみに、ICER(臨床経済的評価研究所)の予想は4500ドルでしたが、これは一回の治療コースを10日間としていたためで、早期投与により治療期間が短縮したことを考えれば、販売価格は当初の予想通りです。また、390ドルは政府・公共機関向けの価格で、米国の民間医療保険会社向けの価格は1投与当たり520ドルで、標準的な治療費の合計は3120ドル以下になります。

ギリアドは「レムデシビル」の価格についてもっと高い価格を設定することも可能でした。なぜなら、「レムデシビル」を投与された患者は他の患者よりも平均で4日間も早く退院することができましたし、何より「レムデシビル」に代わる治療薬もないからです。

さらに、早期退院は患者だけでなく、病院にとっても非常にありがたいことなのです。これは、コロナ患者の入院期間が長ければ長いほど、通常の手術の実施回数が減るため業績が悪化するからです。つまり、病院は高額な医薬品代を支払って、通常の手術で稼いだ方が得なわけです。

加えて、これまでの研究開発費や製造コスト、無償提供分を加味すると、ギリアドが「レムデシビル」のコストを回収するには、約300万コース分も売る必要があります。

こうしたことから、ギリアドは「レムデシビル」を人々が払える限界まで引き上げることもできますが、それをしなかったのは政治的地雷を踏んでしまう可能性があるからです。

ギリアドは同社のC型肝炎治療薬「ハーボニー」を巡って、その価格が高過ぎるとして議会から厳しく追及された苦い過去があるのです。そして「レムデシビル」よりも有効性の高い治療薬やワクチンが開発される可能性があることを考えれば、「レムデシビル」の価格を人々が払える限界まで試すことは得策ではないと言えるわけです。(大統領選挙を控えている今はとくに。)

【ギリアド・サイエンシズ(日足)】
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「レムデシビル」の価格発表を受けて、ギリアドの株価は前日比-0.01%とほぼ変わらずで取引を終えました。これは、価格設定がポジティブサプライズにもネガティブサプライズにもならない絶妙な価格だったことを意味します。

【ギリアド・サイエンシズ(週足)】
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ギリアドの週足チャートを眺めると、三角保ち合いを形成していることがわかります。三角保ち合いは上下の幅が次第に縮小していき、最終的にはどちらか一方に放たれることを意味します。

どちらに放たれるかはわかりませんが、ギリアドは「レムデシビル」によって、売上高が10%押し上げられることが予想されるので、業績の拡大が期待されること、そしてバリュエーションは予想PER11.8倍と割安であることを考えれば、長期投資家にとって有望な銘柄と言えそうです。

グッドラック。

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