バフェット太郎です。

FRBのパウエル議長が「コロナ禍で労働市場の回復は遅れており、”最大雇用”に達するまでゼロ金利政策を維持する」と強調しました。また、インフレについては「当面は2%を上回る物価上昇率を目指す」とし、緩やかなインフレを容認する姿勢を示しました。

この”最大雇用”については、FRBはかねてから”失業率4.1”を目安にしているので、言い換えれば失業率4.1%に達するまでゼロ金利政策が維持される公算が大きいと考えられます。

【失業率】
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米失業率の推移を眺めると、コロナ危機直後に14.7%と1930年代の世界恐慌以来最悪の水準に達しましたが、2021年1月は6.3%と順調に低下していることがわかります。

ただし、パウエル議長は「労働参加率が低下したことを考えれば、実質的な失業率は依然として10%近い」としています。

そもそも失業率というのは、専業主婦や職探しを諦めたような、就職する気のない人たちを統計から除外しているので、彼らは失業者には含まれません。

そのため、コロナ禍の中で職探しを諦めた人たちが大勢いることを考えれば、実質的な失業率は10%近いと言えるわけです。言い方を変えれば、集団免疫が達成されて経済活動が再開されれば、再び職探しを始めようと、労働市場に戻ってくる人たちが大勢いることを意味しますから、経済活動が再開する中で失業率がなかなか低下しないということが起こり得ると予想できます。

また、それを踏まえてFRBは失業率が4.1%に達するのは2023年としていますから、パウエル議長の「最大雇用に達するまで、ゼロ金利政策を維持する」という発言は「2023年までゼロ金利政策を維持することになりそうだ」と言い換えることができます。

さて、こうした中で懸念されることは、インフレリスクです。

【米コアCPI(消費者物価指数):前年比】
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米コアCPI(前年比)の推移を眺めると、2021年1月は1.4%と、FRBがかねてから目標としている2%にはほど遠くデフレ気味であることがわかります。

しかし、バイデン政権による1兆9000億ドル(約200兆円)規模の巨額の財政出動によって、財政悪化懸念によるドルの下落、すなわちインフレが懸念されているのです。

【米10年物ブレーク・イーブン・レート】
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たとえば、市場が予想する期待インフレ率を示す「米10年物ブレーク・イーブン・レート」は2.22%と、およそ7年ぶりの水準に達しています。

これは、市場参加者が向こう10年にわたって、年平均2.2%のインフレを予想していることを意味します。

FRBはインフレ率2%をターゲットにしていますから、2.22%は理想的な水準です。ただし、巨額の財政出動への懸念から、米10年物ブレーク・イーブン・レートが一段と加速する可能性もあるのです。

これに対して、パウエル議長は「物価は30年間にわたって低位で安定してきた」とし、インフレに対する警戒感を一切示しませんでした。また、イエレン財務長官(前FRB議長)もインフレリスクを巡っては「インフレには対処法がある」として、インフレを容認する姿勢を示しています。

パウエル議長もイエレン財務長官も、インフレを容認してまで”最大雇用”を優先するのは、コロナ禍の中で生活が困窮している低所得者層を助けるためです。

コロナ禍で最も打撃を受けたのは、小売業や飲食業、レジャー・娯楽など、比較的賃金の低い業種で働く低賃金労働者です。

彼らの生活が目に見えて改善したのは、コロナ危機直前の最大雇用が達成された時でした。つまり、パウエル議長とイエレン財務長官は「最大雇用を達成すれば、低所得者層の生活を救うことができる」と確信しているのです。

言い方を変えれば、インフレを懸念して財政出動と金融緩和を躊躇すれば、低所得者層の生活を救うことができないので、インフレへの対処は後回しになるということです。

そしてそれはつまり、資産バブルをも容認することを意味しますから、株や不動産、金、BTCなどの資産を持つ者と持たざる者との間で一層格差が拡大することを意味します。

グッドラック。

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