バフェット太郎です。

米労働省が5月の雇用統計を発表しました。内容は悪かったです。

【失業率】
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失業率は予想5.9%に対して、結果5.8%と予想を下回りました。

【労働参加率】
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ただし、労働参加率は61.6%と前月の61.7%から小幅に下落しましたから、失業率は見た目以上に悪いことを示唆しています。

そもそも労働参加率というのは、労働力人口である就業者数と失業者数を足し合わせた人口を、生産年齢人口である15歳~64歳までの人口で割って求めた値のことです。

つまり、学生や専業主婦、さらに職探しを諦めた人たちは、就業者でも失業者でもありませんから労働力人口には含まれないのです。

そのため、労働参加率が低下しているということは、専業主婦や職探しを諦めた人たちが増えていることを示唆しています。

これは、コロナ禍によって遠隔授業になった子どもたちの世話をするために、就職を断念した女性が大勢いたり、バイデン政権による手厚い経済対策により、給料よりも多い失業保険を受け取った人たちが、職場に復帰しないなど、雇用のミスマッチが起きているからだと考えられます。

ですから、労働参加率が戻らない限りは、いくら失業率が低下したとしても労働市場がコロナ前の水準には戻ったとは言えませんから、実際の失業率は見た目以上に悪いと言えるのです。

ただし、米国で新型コロナワクチンを1回以上接種した人の割合は50.9%と、順調に普及していることを考えれば、経済の正常化とともに労働参加率も徐々に回復していくと思います。

【非農業部門雇用者数】
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また、非農業部門雇用者数は予想65万人増に対して、結果55万9000人増と予想を下回りました。

3月と4月の非農業部門雇用者数は、速報値から計2万7000人分が上方修正されました。

これで2020年5月から2021年5月までの13カ月間で、1447万人分の雇用を取り戻しましたが、2020年の3月と4月のわずか2カ月間で2206万人もの労働者が職を失ったことを考えると、まだ3分の2の雇用しか取り戻していないことがわかります。

【平均時給(前年同月比)】
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平均時給は前年同月比で予想+1.6%に対して、結果+2.0%と予想を上回りました。また、前月比は予想+0.2%に対して、結果+0.5%と予想を上回りました。

平均時給が予想を上回る伸びを示しているということは、比較的賃金の高いホワイトカラー労働者を中心に雇用が回復している一方で、新型コロナウイルスの打撃を最も受けた、比較的賃金の低いブルーカラー労働者ほど回復が鈍化していることを示唆していますから、あまり良い兆候とは言えません。

【サービス部門】
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実際、賃金が低いことで知られている「小売業」の雇用者数は、前月比で5800人減と2カ月連続で減少したほか、4月分は3万0200人減と速報値の1万5300人から1万4900人分が下方修正されました。

これは、コロナ禍で人々が自宅で食事をする機会が増えたことで、これまでスーパーマーケットや宅配業者の雇用は好調だったのですが、経済の正常化に伴って雇用を縮小させる動きが見られたためです。

また、「レジャー・娯楽」は29万2000人増と前月から伸びが鈍化していますし、2020年の3月と4月のわずか2カ月間で、807万4000人分の職が失われた一方で5月以降の13カ月間で未だ555万人分と、69%しか雇用を取り戻せていませんから、コロナ前の水準からはほど遠いと言えます。

【商品生産部門】
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加えて、商品生産部門は「建設」が2万人減と2カ月連続で減少したほか、4月分は5000人減、速報値の増減ゼロから5000人分が下方修正されました。

製造業は2万3000人増でしたが、4月分は3万2000人減と速報値の1万8000人減から1万4000人分が下方修正されました。

これは、サプライチェーンの混乱やコロナ特需によって、木材や銅などの部材で供給不足が起こっていることが原因だと考えられます。

★★★

こうしたことから今回の雇用統計で、非農業部門雇用者数が市場予想を下回ったのには、大きくわけて5つの理由が考えられます。

一つ目は、学校再開の遅れなどで、遠隔授業になった子どもたちの世話をするために、就職を断念した女性が多いこと。

二つ目は、バイデン政権による手厚い経済対策を背景に、給料よりも多い失業保険を受け取った人たちが、職場に復帰しないなど、雇用のミスマッチが起きていること。

三つ目は、経済の正常化に伴って、コロナ禍が追い風となっていたスーパーマーケットや宅配業者業が雇用を縮小させたこと。

四つ目は、接客など低賃金で感染リスクの高い仕事を敬遠する傾向がいまだに根強いこと。

五つ目は、サプライチェーンの混乱やコロナ特需によって部材の供給不足が起こっていて、雇用を増やせないこと。

以上5つの理由から、雇用の回復ペースが鈍化していて、最大雇用に向けた「労働市場のさらなる著しい進展」は未だ確認できていませんから、株式市場では量的緩和継続への期待感が高まりました。

ただし、ワクチンが順調に普及していることや、バイデン政権による手厚い経済対策、さらにサプライチェーンの混乱も永遠に続かないことを考えれば、これらの問題はいずれ解消されます。

そのため、5月の雇用統計が市場予想を下回ったことで7月のFOMCでテーパリングの計画が発表される可能性は小さくなりましたが、6月と7月の雇用統計次第では、8月のジャクソンホール会議か、あるいは9月のFOMCでテーパリングの計画が発表される可能性があります。

そして、テーパリングの計画が発表されるということは、「金融相場の終わりの始まり」を意味しますから、株式市場は調整局面を迎える公算が大きく、10月頃にかけて株価は急落すると思います。

グッドラック。

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