バフェット太郎です。
FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長はジャクソンホール会議で、テーパリング(量的緩和の段階的縮小)の年内開始の可能性を改めて表明したものの、その時期については明言することを避けました。
これは、9月FOMC(9月21~23日)でテーパリングが決定する可能性がなくなったことを意味します。なぜなら、パウエル議長はマーケットが混乱しないように、テーパリングの決定については予めアナウンスすることが予想されるからです。
そのため、最も早いシナリオは、9月FOMCで11月FOMCでのテーパリング決定を示唆し、11月FOMCでテーパリングの開始時期を決定、そして12月から開始するというものになります。
ちなみに、11月FOMCは11月2~3日、12月FOMCは12月14~15日の日程で開催されることが予定されています。
パウエル議長の労働市場に対する現状認識と見通しについて
パウエル議長は労働市場の現状について、テーパリングの条件となる「労働市場の著しい進展」こそ確認できたものの、「失業率は5.4%と、依然として高すぎる」と指摘したほか、新型コロナウイルスのデルタ変異株の感染拡大が直近のリスク要因になると警戒感を強めました。
ただし、労働市場の見通しについては秋以降、学校再開と失業保険の上乗せ給付が打ち切られることで、労働市場の回復は続くと楽観的な見通しを示しました。
なぜ、子どもたちの学校再開と労働市場が関係するのかというと、それは、コロナ禍で遠隔授業になっていた子どもたちの世話をするために、就職を断念していた母親たちが、学校再開とともに職場復帰することが予想されるからです。
また、バイデン政権による手厚い経済対策を背景に、これまで給料よりも多い失業保険を受け取っていた低賃金労働者たちも、失業保険の上乗せ給付が打ち切られることで、職探しを再開することが予想されます。
パウエル議長のインフレ見通しについて
また、パウエル議長は足元でインフレが加速していることについて、「一時的」との認識を改めて示しました。
たとえば、7月のコアPCE(個人消費支出:前年比)は+3.6%と、FRBが目標とする+2%を大きく上回っています。
そのため、インフレ見通しについてはFRB内だけでなく、市場参加者の間でも意見が分かれていて、インフレが加速すると考えている投資家も決して少なくありません。
ところが、パウエル議長は足元のインフレ加速については、前年の反動とサプライチェーンのボトルネックによるもので、「一時的」との姿勢を崩しませんでした。
また、賃金の上昇が物価上昇の圧力になるとの懸念については、「賃金の上昇は歓迎すべきだ」とした上で、「賃金の上昇が物価上昇につながっている兆候は見当たらない」として、物価上昇の圧力は差し迫っていないとの認識を示しました。
そして、パウエル議長はインフレが持続的に加速しにくい要因として「世界的なディスインフレ」を挙げました。
米国のインフレを抑制するディスインフレとは
そもそもディスインフレとは、好景気の中でインフレが加速しない状態のことを指します。
通常、好景気になると製品の原材料や賃金が上昇することで販売価格に転換され、これによって物価は加速するものです。
ところが、90年代以降はグローバル化とハイテク化が加速したことで、好景気でもインフレが加速しにくくなったのです。
たとえば、自動車業界は「組み立て」など簡単な工程を中国やメキシコなど、賃金が比較的安い新興国に委託することで、国内労働者の賃金を抑制してきました。
また、ハイテク化によって無駄な資源が大幅に削減されたことで、生産効率が飛躍的に向上し、低コストで製品をつくることができるようになりました。
そして、このグローバル化とハイテク化の流れが、歩い日突然逆回転するとは考えにくいですから、米国や日本などの先進国はインフレが加速しにくいというわけです。
インフレは本当に「一時的」なのか
パウエル議長は過去の経験則についても言及しました。
【政策金利】
たとえば1950年代において、政策金利が1%を割り込む場面がありましたが、この時、一時的なインフレを抑えるためにFRBが利上げに踏み切ったところ、その二年後にリセッション(景気後退)入りしてしまったのです。
これは、金融政策の決定が実体経済へと波及するのに1年を要したことから、一時的なインフレに対して金融引き締めを行った結果、インフレが鈍化したタイミングで、利上げが経済の打撃になってしまったからです。
【政策金利】
また、70年代には一時的だと予想されていたインフレが高水準で高止まりしたことがありました。この時FRBは、「利上げ」が後手に回ってしまったことで、物価と金利が急騰してしまうという事態に陥りました。
エコノミストはその後、この70年代のインフレについて、「消費者や企業のインフレ期待が物価を押し上げる原因になった」と結論づけていて、そのことからパウエル議長は、「足元のインフレが(50年代のような)一時的なものなのか、あるいは(70年代のように)持続的なものなのかを見極めるのは困難な場合が多い」として、消費者や企業のインフレ期待を注視する姿勢を改めて強調しました。
また、仮にインフレが持続的に加速した場合は、利上げに踏み切ることで「確実に対応する」として、インフレは放置しない姿勢を示しました。
【10年物ブレークイーブンレート】
ちなみに、10年物期待インフレ率(債券市場の投資家が予想する、今後10年の年平均インフレ率)は2.39%と、FRBが目標とする2%こそ上回っているものの、過度に上昇しているわけではありません。
そのため、パウエル議長は今回のインフレが50年代型の「一時的なインフレ」と見ている公算が大きいですから、テーパリングや利上げを急いでいないことがわかります。
つまり、今回のジャクソンホール会議でFRBによる金融緩和を追い風とした「金融相場」は投資家の予想以上に長期化する可能性がありますから、米国株の強気相場はこれからも続く公算が大きいです。
ただし、それでも9月と10月はテーパリングが意識されて調整局面を迎える可能性があります。これは、中長期的に見ると強気相場が続く公算が大きいことを考えると、長期投資家にとって絶好の買い場になります。
グッドラック。
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FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長はジャクソンホール会議で、テーパリング(量的緩和の段階的縮小)の年内開始の可能性を改めて表明したものの、その時期については明言することを避けました。
これは、9月FOMC(9月21~23日)でテーパリングが決定する可能性がなくなったことを意味します。なぜなら、パウエル議長はマーケットが混乱しないように、テーパリングの決定については予めアナウンスすることが予想されるからです。
そのため、最も早いシナリオは、9月FOMCで11月FOMCでのテーパリング決定を示唆し、11月FOMCでテーパリングの開始時期を決定、そして12月から開始するというものになります。
ちなみに、11月FOMCは11月2~3日、12月FOMCは12月14~15日の日程で開催されることが予定されています。
パウエル議長の労働市場に対する現状認識と見通しについて
パウエル議長は労働市場の現状について、テーパリングの条件となる「労働市場の著しい進展」こそ確認できたものの、「失業率は5.4%と、依然として高すぎる」と指摘したほか、新型コロナウイルスのデルタ変異株の感染拡大が直近のリスク要因になると警戒感を強めました。
ただし、労働市場の見通しについては秋以降、学校再開と失業保険の上乗せ給付が打ち切られることで、労働市場の回復は続くと楽観的な見通しを示しました。
なぜ、子どもたちの学校再開と労働市場が関係するのかというと、それは、コロナ禍で遠隔授業になっていた子どもたちの世話をするために、就職を断念していた母親たちが、学校再開とともに職場復帰することが予想されるからです。
また、バイデン政権による手厚い経済対策を背景に、これまで給料よりも多い失業保険を受け取っていた低賃金労働者たちも、失業保険の上乗せ給付が打ち切られることで、職探しを再開することが予想されます。
パウエル議長のインフレ見通しについて
また、パウエル議長は足元でインフレが加速していることについて、「一時的」との認識を改めて示しました。
たとえば、7月のコアPCE(個人消費支出:前年比)は+3.6%と、FRBが目標とする+2%を大きく上回っています。
そのため、インフレ見通しについてはFRB内だけでなく、市場参加者の間でも意見が分かれていて、インフレが加速すると考えている投資家も決して少なくありません。
ところが、パウエル議長は足元のインフレ加速については、前年の反動とサプライチェーンのボトルネックによるもので、「一時的」との姿勢を崩しませんでした。
また、賃金の上昇が物価上昇の圧力になるとの懸念については、「賃金の上昇は歓迎すべきだ」とした上で、「賃金の上昇が物価上昇につながっている兆候は見当たらない」として、物価上昇の圧力は差し迫っていないとの認識を示しました。
そして、パウエル議長はインフレが持続的に加速しにくい要因として「世界的なディスインフレ」を挙げました。
米国のインフレを抑制するディスインフレとは
そもそもディスインフレとは、好景気の中でインフレが加速しない状態のことを指します。
通常、好景気になると製品の原材料や賃金が上昇することで販売価格に転換され、これによって物価は加速するものです。
ところが、90年代以降はグローバル化とハイテク化が加速したことで、好景気でもインフレが加速しにくくなったのです。
たとえば、自動車業界は「組み立て」など簡単な工程を中国やメキシコなど、賃金が比較的安い新興国に委託することで、国内労働者の賃金を抑制してきました。
また、ハイテク化によって無駄な資源が大幅に削減されたことで、生産効率が飛躍的に向上し、低コストで製品をつくることができるようになりました。
そして、このグローバル化とハイテク化の流れが、歩い日突然逆回転するとは考えにくいですから、米国や日本などの先進国はインフレが加速しにくいというわけです。
インフレは本当に「一時的」なのか
パウエル議長は過去の経験則についても言及しました。
【政策金利】
たとえば1950年代において、政策金利が1%を割り込む場面がありましたが、この時、一時的なインフレを抑えるためにFRBが利上げに踏み切ったところ、その二年後にリセッション(景気後退)入りしてしまったのです。
これは、金融政策の決定が実体経済へと波及するのに1年を要したことから、一時的なインフレに対して金融引き締めを行った結果、インフレが鈍化したタイミングで、利上げが経済の打撃になってしまったからです。
【政策金利】
また、70年代には一時的だと予想されていたインフレが高水準で高止まりしたことがありました。この時FRBは、「利上げ」が後手に回ってしまったことで、物価と金利が急騰してしまうという事態に陥りました。
エコノミストはその後、この70年代のインフレについて、「消費者や企業のインフレ期待が物価を押し上げる原因になった」と結論づけていて、そのことからパウエル議長は、「足元のインフレが(50年代のような)一時的なものなのか、あるいは(70年代のように)持続的なものなのかを見極めるのは困難な場合が多い」として、消費者や企業のインフレ期待を注視する姿勢を改めて強調しました。
また、仮にインフレが持続的に加速した場合は、利上げに踏み切ることで「確実に対応する」として、インフレは放置しない姿勢を示しました。
【10年物ブレークイーブンレート】
ちなみに、10年物期待インフレ率(債券市場の投資家が予想する、今後10年の年平均インフレ率)は2.39%と、FRBが目標とする2%こそ上回っているものの、過度に上昇しているわけではありません。
そのため、パウエル議長は今回のインフレが50年代型の「一時的なインフレ」と見ている公算が大きいですから、テーパリングや利上げを急いでいないことがわかります。
つまり、今回のジャクソンホール会議でFRBによる金融緩和を追い風とした「金融相場」は投資家の予想以上に長期化する可能性がありますから、米国株の強気相場はこれからも続く公算が大きいです。
ただし、それでも9月と10月はテーパリングが意識されて調整局面を迎える可能性があります。これは、中長期的に見ると強気相場が続く公算が大きいことを考えると、長期投資家にとって絶好の買い場になります。
グッドラック。
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