バフェット太郎です。
米労働省が8月雇用統計を発表しました。
【非農業部門雇用者数】
非農業部門雇用者数は前月比で予想75万人増に対して、結果23万5000人増と予想を大きく下回りました。
7月の105万30000人増と6月の93万8000人増から大きく減速したことで、労働市場の回復ペースが急速に鈍化していることが示されました。
【失業率】
また、失業率は予想5.2%に対して結果5.2%と予想に一致し、前月の5.4%から0.2%ポイント低下しました。ただし、FRBは2021年末時点で4.5%まで低下することを見込んでいますから、5.2%は依然として高すぎると言えます。
【労働参加率】
加えて、労働参加率も61.7%と、コロナ前の63.4%から依然として1.7%ポイントも下回っていますから、労働市場がコロナ前に戻るには、なお時間がかかることを示唆しています。
ちなみに、労働参加率が低下した理由は、コロナ禍によって遠隔授業になった子どもたちの世話をするために、就職を断念した女性が大勢いること、そして、バイデン政権による手厚い経済対策により、職場の給料よりも多い失業保険給付を受け取っている人たちが職場に復帰したがらないからです。
ただし、8・9月の新学期シーズンから学校の再開が予定されていること、そして9月4日にも失業保険の上乗せ給付が打ち切られることから、秋以降、労働市場は急速に回復する可能性があります。
【平均時給(前年同月比)】
ところで米国では、賃金の上昇がインフレにつながるのでは?との懸念が強まっているんですが、その賃金の上昇率を示す「平均時給」は前年同月比で予想+4.0%に対して、結果+4.3%と予想を上回り、賃上げが加速していることが示されました。
しかし、これは「レストランやホテルなどのサービス業の賃金が上昇したから」という理由ではなくて、むしろそれ以外のセクターで賃金が上昇していることを示唆しています。
なぜ、そう言い切れるのかというと、それはサービス業の雇用者数が全く伸びていないからです。
【サービス部門】
たとえば、「小売業」の雇用者数は2万8500人減と、二カ月連続で減少したほか、「レジャー・娯楽」に至っては増減ゼロと、前月と前々月の40万人前後の増加から、大幅に失速しました。
これは、新型コロナウイルスのデルタ変異株が、急拡大していることが要因として挙げられます。
【一日あたりの新規感染者数】
米国の一日当たりの新規感染者数の7日移動平均線の推移を眺めると、9月2日時点で16万5000人と一月以来の高水準に達しています。
米国は医療保険が高額なうえ、新型コロナウイルスに感染してしまった場合、一人当たりの治療費としておよそ370万円もの高額な医療費がかかると言われているのですが、サービス業ほど感染リスクが高い一方で賃金は低いですから、医療保険に加入していない人たちが大勢いるのです。
すると、2800万人以上いるとされる無保険者はもちろん、いわゆる低保険に加入している人たちは、治療を控えなければなりませんし、それは同時に家族の感染リスクを高めることにつながります。
そのため、感染危機が収束するまでは、サービス業における雇用の回復ペースは一時的に鈍化する可能性があります。
こうした中、サービス部門とは対照的に商品生産部門の雇用は回復基調にあります。
【商品生産部門】
たとえば、「建設業」は6000人増と三カ月連続の減少から増加に転じ、「製造業」も5万2000人増と三カ月連続で増加しました。
これまで商品生産部門は、サプライチェーンのボトルネックが原因で、雇用の回復ペースが低迷していたのですが、一転して好調な数字が示されたということは、ボトルネックが解消しつつあることを示唆しています。
そしてこのボトルネックは、インフレが加速していた原因にもなっていましたから、ボトルネックが解消されつつあるということは、インフレの加速はFRBが当初予想していた通り「一時的」である公算が大きいことを示唆しています。
【回復率】
ちなみに、2020年3月~4月にかけて2206万人分の雇用が失われた一方で、2020年5月以降、1675万人分の雇用を取り戻しましたから、雇用の回復率は「全体」で76%に達しています。
ただし、この「全体」の回復には、とりわけ就業者数の多い「レジャー・娯楽」が一段と回復する必要があります。そして、この「レジャー・娯楽」はデルタ変異株の感染状況次第でもありますから、労働市場の行方は感染状況次第だと言えます。
では、投資家らがデルタ変異株の感染拡大についてどのように考えているのかというと、楽観的に考えている可能性があります。それは何故かと言うと、安全資産とされる長期債が売られ、長期金利が上昇し始めているからです。
【米10年債利回り】
米10年債利回りの日足チャートを眺めると、8月の1.19%で底打ちし、1.33%まで上昇しています。
8月雇用統計が予想を下回り、9月FOMCでテーパリングが決定する可能性がなくなったこと、そして、デルタ変異株が感染拡大していることを踏まえれば、本来なら米10年債利回りは下落(価格は上昇)するはずです。
そうであるのにも関わらず、米10年債利回りが上昇しているということは、債券市場の投資家らはデルタ変異株の感染拡大は近い将来収束すると考えていることを示唆しています。
そして、仮に感染危機が収束すれば、「レジャー・娯楽」などサービス業の雇用が回復しますから、米労働市場は一段と回復することが予想されます。
ただし、米労働市場の一段の回復は、金融引き締めを連想させますから、株式市場の上値は重くなることが予想されます。
グッドラック。
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米労働省が8月雇用統計を発表しました。
【非農業部門雇用者数】
非農業部門雇用者数は前月比で予想75万人増に対して、結果23万5000人増と予想を大きく下回りました。
7月の105万30000人増と6月の93万8000人増から大きく減速したことで、労働市場の回復ペースが急速に鈍化していることが示されました。
【失業率】
また、失業率は予想5.2%に対して結果5.2%と予想に一致し、前月の5.4%から0.2%ポイント低下しました。ただし、FRBは2021年末時点で4.5%まで低下することを見込んでいますから、5.2%は依然として高すぎると言えます。
【労働参加率】
加えて、労働参加率も61.7%と、コロナ前の63.4%から依然として1.7%ポイントも下回っていますから、労働市場がコロナ前に戻るには、なお時間がかかることを示唆しています。
ちなみに、労働参加率が低下した理由は、コロナ禍によって遠隔授業になった子どもたちの世話をするために、就職を断念した女性が大勢いること、そして、バイデン政権による手厚い経済対策により、職場の給料よりも多い失業保険給付を受け取っている人たちが職場に復帰したがらないからです。
ただし、8・9月の新学期シーズンから学校の再開が予定されていること、そして9月4日にも失業保険の上乗せ給付が打ち切られることから、秋以降、労働市場は急速に回復する可能性があります。
【平均時給(前年同月比)】
ところで米国では、賃金の上昇がインフレにつながるのでは?との懸念が強まっているんですが、その賃金の上昇率を示す「平均時給」は前年同月比で予想+4.0%に対して、結果+4.3%と予想を上回り、賃上げが加速していることが示されました。
しかし、これは「レストランやホテルなどのサービス業の賃金が上昇したから」という理由ではなくて、むしろそれ以外のセクターで賃金が上昇していることを示唆しています。
なぜ、そう言い切れるのかというと、それはサービス業の雇用者数が全く伸びていないからです。
【サービス部門】
たとえば、「小売業」の雇用者数は2万8500人減と、二カ月連続で減少したほか、「レジャー・娯楽」に至っては増減ゼロと、前月と前々月の40万人前後の増加から、大幅に失速しました。
これは、新型コロナウイルスのデルタ変異株が、急拡大していることが要因として挙げられます。
【一日あたりの新規感染者数】
米国の一日当たりの新規感染者数の7日移動平均線の推移を眺めると、9月2日時点で16万5000人と一月以来の高水準に達しています。
米国は医療保険が高額なうえ、新型コロナウイルスに感染してしまった場合、一人当たりの治療費としておよそ370万円もの高額な医療費がかかると言われているのですが、サービス業ほど感染リスクが高い一方で賃金は低いですから、医療保険に加入していない人たちが大勢いるのです。
すると、2800万人以上いるとされる無保険者はもちろん、いわゆる低保険に加入している人たちは、治療を控えなければなりませんし、それは同時に家族の感染リスクを高めることにつながります。
そのため、感染危機が収束するまでは、サービス業における雇用の回復ペースは一時的に鈍化する可能性があります。
こうした中、サービス部門とは対照的に商品生産部門の雇用は回復基調にあります。
【商品生産部門】
たとえば、「建設業」は6000人増と三カ月連続の減少から増加に転じ、「製造業」も5万2000人増と三カ月連続で増加しました。
これまで商品生産部門は、サプライチェーンのボトルネックが原因で、雇用の回復ペースが低迷していたのですが、一転して好調な数字が示されたということは、ボトルネックが解消しつつあることを示唆しています。
そしてこのボトルネックは、インフレが加速していた原因にもなっていましたから、ボトルネックが解消されつつあるということは、インフレの加速はFRBが当初予想していた通り「一時的」である公算が大きいことを示唆しています。
【回復率】
ちなみに、2020年3月~4月にかけて2206万人分の雇用が失われた一方で、2020年5月以降、1675万人分の雇用を取り戻しましたから、雇用の回復率は「全体」で76%に達しています。
ただし、この「全体」の回復には、とりわけ就業者数の多い「レジャー・娯楽」が一段と回復する必要があります。そして、この「レジャー・娯楽」はデルタ変異株の感染状況次第でもありますから、労働市場の行方は感染状況次第だと言えます。
では、投資家らがデルタ変異株の感染拡大についてどのように考えているのかというと、楽観的に考えている可能性があります。それは何故かと言うと、安全資産とされる長期債が売られ、長期金利が上昇し始めているからです。
【米10年債利回り】
米10年債利回りの日足チャートを眺めると、8月の1.19%で底打ちし、1.33%まで上昇しています。
8月雇用統計が予想を下回り、9月FOMCでテーパリングが決定する可能性がなくなったこと、そして、デルタ変異株が感染拡大していることを踏まえれば、本来なら米10年債利回りは下落(価格は上昇)するはずです。
そうであるのにも関わらず、米10年債利回りが上昇しているということは、債券市場の投資家らはデルタ変異株の感染拡大は近い将来収束すると考えていることを示唆しています。
そして、仮に感染危機が収束すれば、「レジャー・娯楽」などサービス業の雇用が回復しますから、米労働市場は一段と回復することが予想されます。
ただし、米労働市場の一段の回復は、金融引き締めを連想させますから、株式市場の上値は重くなることが予想されます。
グッドラック。
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