バフェット太郎です。

先週、ドル円は一時99円台をつけましたが、そもそもどうして円が買われるのでしょうか。

急激な円高進行は先月24日、英国のEU(欧州連合)離脱の決定を受けてから始まりました。ドル円は106円台から99円台に急騰し市場参加者たちはパニックに陥りました。英国がEU離脱したことで、後に続く加盟国もあるだろうとの憶測に欧州経済は負のスパイラルに陥るだろうと予想されたことで、安全資産としての金や円が買われたわけです。

過去を振り返れば、円が買われたのは今回のケースだけでなく、08年の金融危機や10年の欧州債務危機、11年の東日本大震災のときなど、「危機」のときほど円が急騰しています。

では、そもそもなぜ「危機」において円が金と同じように安全資産として見られ、世界の投資家から買われるのでしょうか。日本は労働人口の減少に加えて巨額の財政赤字を抱えており、いつ潰れてもおかしくないと言う人があちこちにいるなど、未来がとても暗い国です。こんな暗い国のクソみたいな通貨を一体誰が好き好んで買うと言うのでしょうか。

JPモルガン・チェース銀行の佐々木融氏によれば、「国力と為替相場の関係は希薄」と述べています。普通、ロシアやベネズエラのように経済が危機に瀕すると売られる通貨がある一方で、日本のように成長力が弱い国の通貨が買われる場合もあるんです。その理由は大きく分けて二つあります。

一、物価と為替相場の関係
二、金利と為替相場の関係

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一、【物価と為替相場の関係】
日本はデフレ経済が20年近く続きました。デフレが長期間続いた主な要因として、通貨の供給量が足りなかったという意見があります。実際は通貨の供給量は十分だったのですが、国民が消費も投資もほとんどすることなく貯蓄ばかりするので、市場に通貨が流れませんでした。結果的に市場に出回る通貨の量が減り、通貨の価値が高まりました。

こうした状況においては経済は一層デフレになります。デフレとは貨幣の価値がモノの価値よりも高くなるということですから、貨幣の価値が上昇する局面では円に投資した方が賢いということになります。従って、国民は無意識のうちに最も価値の値上がりが期待できる貨幣に投資していたことになります。世界の投資家も同じように価値の値上がりが期待できる円に投資していたというわけです。

二、【金利と為替相場の関係】
日本のような先進国は、中央銀行が景気刺激策として積極的に金利を低下させることができます。一方で新興国の中央銀行が景気刺激策として金利を低下させると、投資資金が流出し財政難に陥ります。そのため新興国では政策金利を引き上げて、投資資金の流入を期待するわけです。

日本が同じように景気刺激策として金利を低下させる場合、通常の理論に従えば、投資資金は流出すると考えます。しかし市場が悲観的なときほど、金利の低い円が買われるんです。そのメカニズムは以下の通りです。

【楽観】:投資家はリスクに積極的→低金利の円を借りて、高金利ドルを買う。=円安ドル高
【悲観】:投資家はリスクに消極的→高金利のドルを売り、もともと借りていた円を買い戻す。=ドル安円高

こうしたメカニズムは決して不変的なものではありませんが、日本人が貯蓄をやめてお金を散財するようになるとは思えないし、円に代わるような信頼できる通貨も見当たりません。従って消去法で日本円はこれからも安全資産として投資マネーの「逃避先」になるのでしょう。

グッドラック。

(参考:日本経済新聞7月6日付朝刊)
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