バフェット太郎です。

エネルギー株を買うとき、将来の原油価格を予想して株を買うということは絶対に止めてください。なぜなら、原油価格の予想はハズレるものだからです。

2000年、エクソン・モービル(XOM)のリー・レイモンドCEOは部下たちに「我々は1980年の時点で、2000年について何を言っていた?」と質問しました。

XOMの経営戦略企画部門の書庫には1940年代ごろからの、「エネルギー需要」と「原油価格」についての20年予測が所蔵されていて、これについてレイモンドは質問したのです。

分析した結果わかったことは、1980年代の時点で2000年のエネルギー消費量見通しについて、わずか1%の誤差で正確に予想していた一方で、原油価格の見通しについては大きくハズレていたのです。

原油価格の見通しがハズレた主な要因は、70年代前半に起きたオイルショックにより、1バレル5ドルにも満たなかった原油価格が70年代後半には1バレル40ドルと大暴騰し、これを踏まえて予想した価格トレンドが高すぎたためです。

結果、レイモンドたちは二つの結論にたどり着きました。

一、新たな油層の発見を助ける技術革新を軽視していた。
二、地政学的な変化が原油価格に及ぼす影響を軽視していた。

これ以降、XOMは長期経営計画策定において価格予測を使うことをやめました。

結果、2011年~2014年秋頃にかけて1バレル100ドルで推移していたとき、ライバルのシェブロン(CVX)やコノコフィリップス(COP)が原油価格上昇の恩恵を受けやすい上流部門に積極的に投資していたのにも関わらずXOMだけ原油価格の下落の恩恵を受けやすい下流部門に投資していました。これはレイモンドCEOの時代から、「XOMのビジネスは堅実でムラなく管理することが大切だ」と考えられているためです。

当初アナリストたちは原油価格上昇の恩恵を授かれない下流部門への投資にやや批判的な立場でしたが、2014年末から始まった原油価格の暴落がXOMのムラなく管理するビジネスの正しさを証明しました。
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さて、現在の原油価格は原油在庫によって左右されているのですが、これには問題があります。米国などの先進国で最新統計を開示している一方で、ロシアや中国など開示していない地域があることに加えて、洋上にスーパータンカーを停泊させている貿易会社や石油会社に在庫量を公表する義務はないため、本当はいったいどれくらいの在庫があるのか誰にもわからないのです。

例えば、シンガポールを囲む海峡は世界最大級の原油貯蔵拠点になっていて、そこに停泊するタンカーにどれだけの原油が積まれているのかわからないんです。

また、先月ナイジェリアで起きた武装勢力による原油施設の攻撃において、当初アナリストたちは原油生産量が減少すると予想していました。しかし実際にはナイジェリアの原油輸出量が150万バレルを割ることはなかったのです。いったい原油はどこから出てきたのでしょうか。

在庫量の不透明感が高まるなか、生産量の予測も難しくなっています。今までOPEC(石油輸出国機構)が価格操作という伝統的な役割を担ってきたのですが、米国のシェールオイル増産による原油価格急落はOPEC加盟国の経済に打撃を与えたことをきっかけにその役割を放棄してしまったからです。OPEC加盟国も自国経済のために原油を輸出しなければ食べていけないのが理由です。

このように、原油価格は信頼性の高い統計がないことや複雑なゲーム理論により不透明感が高まっています。
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原油価格の日足チャートですが、目先のターゲットは41ドルを指しています。それを割り込むようなら35~36ドル、さらにそれを割り込むようなら二月の最安値26ドルを目指します。

バフェット太郎は当たらない原油の価格予測をしてXOM株を買ったり売ったりはしません。堅実でムラなく管理されているビジネスを信じてバイ&ホールドするだけです。

グッドラック。
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